歌曲紹介
2026年3月28日、ホロライブEnglish -Advent-所属の歌姫・Nerissa Ravencroftが、待望の3rdシングル「Blue World」をリリースした。本作は、彼女自身による作詞と、ペルソナシリーズなどで知られる作曲家・目黒将司による作曲・編曲という強力なタッグが実現した意欲作である。

Nerissaは、深淵から這い上がってきた悪魔という設定のバーチャルYouTuberであり、その美声とダークな世界観で多くのファンを魅了してきた。1st EP『In My Feelings』や「Say My Name」「Sweetest Scarlet」などのオリジナル曲をリリースし、2024年8月には3Dモデルもデビューさせるなど、着実に活動の幅を広げている。今作「Blue World」は、彼女の音楽的な進化を象徴する一曲であり、孤独と絶望を描きながらも、最終的には自らの手で未来を切り開く希望のメッセージを込めている。
楽曲は、シネマティックなオーケストレーションとロックのエッセンスが融合した壮大なサウンドスケープが特徴。目黒将司の持ち味である、緊張感と情感が同居するメロディラインが、Nerissaの力強くも繊細な歌声と見事に共鳴している。イントロから感じられる重厚な雰囲気は、まさに「深淵の歌姫」という彼女のイメージに相応しいものだ。
歌詞
Walking an empty road
誰もいない道を歩いてる
Nowhere for me to go
行く場所も何もなくて
Lost and lonely
途方に暮れて 一人ぼっち
Yeah it's only me
そう、ここにいるのは僕だけ
Burnt out like candle light
ろうそくのように燃え尽きて
Left blazing through the night
夜通し燃え続け
Melting slowly
ゆっくりと溶けていく
Until nothing else is left of me
僕のすべてが消えるまで
Colored in shades of grey
すべてが灰色の世界で
Watching the days pass in front of me
日々が過ぎ去るのをただ見てる
Longing to find a way
どうにか抜け出す方法を
I can fly away
飛び立てるように願ってる
I'm drifting through this blue, blue world
この青くて青い世界を ふわふわとさまよってる
It's always been clear to me
僕にはいつも分かってた
How cruel the world can be
この世界がどれほど残酷か
My shadow's the only one beside me
僕のそばにいるのは 影だけ
No love to call my own
僕だけの愛なんてない
No notifs on my phone
携帯の通知も何もなくて
Sunken silence
沈み込んだ沈黙が
Has engulfed the very life I lead
僕の生きてるすべてを飲み込んでしまった
Colored in shades of grey
すべてが灰色の世界で
Watching the years pass in front of me
年月が過ぎ去るのをただ見てる
Memories I wish would stay
ずっと残ってほしい思い出は
Always fade away
いつも消えていってしまう
I'm lonely in this blue, blue world
この青くて青い世界で 僕は一人ぼっち
Though my heart is torn
心は引き裂かれて
And my weary wings are worn
疲れ果てた翼はすり切れて
Just tonight, can't I dream of a better life
今夜だけでいい もっと幸せな人生を夢見てもいい?
With happiness in sight?
幸せが見えるような
Colored in shades of grey
すべてが灰色の世界で
Watching my life pass in front of me
僕の人生が過ぎ去るのを見てる
Maybe it's not too late
もしかしたらまだ遅くないかも
If I can't escape
逃げ出せないのなら
I'll have to make my own way
自分で道を切り開くしかない
Colored in shades of grey
すべてが灰色の世界で
Palette in hand, I can make a change
パレットを手に 僕は変われる
I'll try to find the strength
勇気を見つけてみるよ
Take a breath and paint
息を吸って 描いていく
Bring color to this blue, blue world
この青い世界に 色を与えるんだ
歌詞意味
孤独と喪失の淵
「Walking an empty road / Nowhere for me to go」——冒頭から、行き先のない空虚な道を歩く姿が描かれる。これは物理的な道ではなく、人生における方向性の喪失を暗示している。「Lost and lonely / Yeah it's only me」という繰り返しは、絶対的な孤独感を強調する。
「Burnt out like candle light」という表現は、燃え尽きたロウソクの灯りに自分を重ね合わせている。熱く燃えていた時期もあったが、今は夜を照らしながらもゆっくりと溶けていく——このイメージは、創作者やアーティスト特有の燃え尽き症候群(バーンアウト)とも重なる解釈が可能だ。Nerissa自身も、音楽活動の中で様々な困難を乗り越えてきたはずであり、この歌詞には自身の経験が投影されているかもしれない。
「Colored in shades of grey」——灰色のグラデーションに彩られた世界。これは、感情の無色化、つまり憂鬱や無気力の状態を視覚的に表現している。現代社会における「ブルー(憂鬱)」という概念が、ここでは「blue, blue world」として具象化されている。
絶望の深層
「It's always been clear to me / How cruel the world can be」——世界の残酷さを誰よりも理解している。深淵から来た悪魔という設定を持つNerissaにとって、この言葉は単なる比喩ではなく、彼女のルーツと重なる部分があるかもしれない。
「No love to call my own / No notifs on my phone」——現代的な孤独の表現として、この一節は特に印象的だ。デジタル時代において、スマートフォンの通知は人間関係の指標となっている。誰からの連絡もないということは、社会的な接続性の喪失を意味する。「Sunken silence / Has engulfed the very life I lead」——沈黙が人生そのものを飲み込んでいく、という表現は、孤独がいかに侵食的であるかを物語っている。
ここで再び「Colored in shades of grey」が繰り返されるが、前回は「days(日々)」だったのが「years(年月)」に変わっている。時間の経過とともに絶望が深まっていく様子が、わずかな言葉の変化で表現されている。「Memories I wish would stay / Always fade away」——留めておきたい記憶さえも消えていく。これは、創傷後ストレスや、失われた関係性への哀悼とも読める。
希望の兆し
「Though my heart is torn / And my weary wings are worn」——心は引き裂かれ、疲れ果てた翼はすり減っている。悪魔の翼という設定を持つNerissaにとって、「翼」は自由と飛翔の象徴であり、その損耗は精神的・肉体的な消耗を示唆している。
しかし、ここで転換が訪れる。「Just tonight, can't I dream of a better life / With happiness in sight?」——たった今宵だけでも、幸せが見えるより良い人生を夢見てもいいだろうか?この問いかけは、絶望の淵にあっても、希望を諦めきれない人間の揺らぎを描いている。
自己救済と創造
「Maybe it's not too late / If I can't escape / I'll have to make my own way」——逃げられないなら、自分で道を切り開くしかない。この決意の表明は、Nerissaのキャラクター性とも重なる。深淵から這い上がってきた彼女は、困難を乗り越える力を持っている。
最後の一節で、重要なモチーフが登場する。「Palette in hand, I can make a change」——パレットを手に取り、変化を起こす。ここで「灰色(shades of grey)」の世界に対して、自ら「色(color)」を加える創造的行為が提示される。これは音楽制作そのものを暗示している可能性もある。Nerissaにとって、歌うこと、創作することが、青い世界に色をもたらす行為なのだ。
「Take a breath and paint / Bring color to this blue, blue world」——息を吸って描き、青い世界に色をもたらす。ブルー(青)は憂鬱を意味する一方で、Nerissaのイメージカラーでもある。この言葉遊びの中に、彼女のアイデンティティと、音楽への情熱、そしてファンへのメッセージが凝縮されている。
まとめ
「Blue World」は、孤独と絶望の深淵から、自らの力で希望を描き出す——そんな普遍的な人間ドラマを、Nerissa Ravencroftの独特な世界観で表現した作品である。灰色に染まった世界の中で、創作という行為によって色を取り戻していくプロセスは、まさにアーティストとしての彼女の生き方そのものとも言える。
目黒将司の壮大なサウンドプロダクションと、Nerissaの情感豊かなヴォーカルが織りなす世界は、リスナーを深い感情の旅へと誘う。特に、現代社会におけるデジタル孤独や、創作者の燃え尽きというテーマは、多くの人々の胸に響くものがあるだろう。
この曲は、単なるバラードではなく、苦しみの中から這い上がる力強さを讃えるアンセムでもある。Nerissaが歌う「Bring color to this blue, blue world」は、彼女自身の音楽的な使命宣言であり、同時に、苦しい時期を過ごす全ての人々への応援歌でもある。深淵の歌姫が紡ぐ、この青い世界に色をもたらす物語は、今後の彼女の音楽キャリアにおける重要な一ページとなるに違いない。