歌曲紹介
本作の舞台は
アメリカ合衆国に召喚された「偽りの
聖杯戦争」。数多のサーヴァントが入り乱れる中、この楽曲は特に「Archer」クラスの
ギルガメッシュ、あるいは「Saber」クラスのリチャード
獅子心王と深く結びついたテーマとして書き下ろされたと考えられる。楽曲は2分14秒というコンパクトな構成ながら、澤野特有の重厚な
オーケストレーションと、Benjaminの詩的で感情的な英語詞が融合し、英霊たちの「忠誠」と「背徳」、「栄光」と「喪失」の相克を描き出している。
タイトル「AVALONIAN(アヴァロニアン)」は、理想郷アヴァロンにまつわる者、あるいはアヴァロンそのものを指す言葉。
聖杯戦争という現代の狂気の中で、過去の英雄たちが抱く「理想郷」への憧憬と、そこへの到達を諦めきれない想いが込められている。
歌詞
In my dreams I catch your eye
夢の中で 君の視線を捕まえる
And it's strange to see me shy
自分が照れているなんて 不思議な感じ
I strung my guitar beside the sea
海辺でギターを弾いた
My brother lied to guide me
兄(弟)は僕を導くために嘘をついた
Couldn't betray your will but tried
君の意志を裏切れない でも僕は挑んだ
Trapped out I stayed by your side
閉じ込められて それでも君のそばにいた
Now when I see the setting sun
今 夕日を見るたび
I picture you there and never run
君の姿を思い浮かべ 決して逃げない
There's got enough disgrace
もう十分に 情けないことばかり
I can still remember the taste
その味は今でも覚えている
They call me the lie and now I'm worn
奴らは僕を嘘つきと呼び もう疲れ果てた
So many a time I assume
何度も 僕は思い込んでしまう
Couldn't betray your will but tried
君の意志を裏切れない でも僕は挑んだ
Trapped out I stayed by your side
閉じ込められて それでも君のそばにいた
Now when I see the setting sun
今 夕日を見るたび
I picture you there and never run
君の姿を思い浮かべ 決して逃げない
I'll die defending your glory
君の栄光のためなら 死ねる
Your shiver is not a story
君の震えは 作り話じゃない
I'll die defending your glory
君の栄光のためなら 死ねる
Your shiver is not a story
君の震えは 作り話じゃない
Couldn't betray your will but tried
君の意志を裏切れない でも僕は挑んだ
Trapped out I stayed by your side
閉じ込められて それでも君のそばにいた
Now when I see the setting sun
今 夕日を見るたび
I picture you there and never run
君の姿を思い浮かべ 決して逃げない
I'll die defending your glory
君の栄光のためなら 死ねる
Your shiver is not a story
君の震えは 作り話じゃない
I'll die defending your glory
君の栄光のためなら 死ねる
Your shiver is not a story
君の震えは 作り話じゃない
歌詞意味
「夢と現の狭間で見る主」
冒頭の「In my dreams I catch your eye / And it's strange to see me shy」は、英霊として召喚された者の視点から描かれている。普段は傲岸不遜な英雄が、夢の中ではかつての主(マスター、あるいは生前の王)の前で「shy(内気)」になるという対比は、絶対的な忠誠心の裏に潜む「人間的な畏敬」を示唆している。
「I strung my guitar beside the sea」というモダンなイメージは、古代の英雄が現代に召喚され、海辺でギターを奏でるという非日常的な情景を想起させる。これは『
Fate/strange Fake』における
ギルガメッシュ(Archer)が現代のスノウフィールドに降り立ち、かつての友人エルキドゥ(Enkidu)の記憶と重ね合わせながら、あるいはその存在を探して佇む姿を映し出している可能性がある。
「偽りの導きと真実の忠誠」
「My brother lied to guide me」は、この楽曲の核心を突くフレーズである。「兄弟」は生前の親友—エルキドゥを指すと考えられ、彼は
ギルガメッシュにとって「半身」であり
「鏡」であった。エルキドゥは
ギルガメッシュの「暴れん坊」な王を正すために神々から遣わされた存在であり、ある種「偽り(lie)」を持って王の前に現れた。しかしその結果、二人は永遠の友となり、王は
人間性を得た。
「Couldn't betray your will but tried」は、この複雑な関係性を表現している。「お前の意志を裏切れなかった、しかし試みた」—これはエルキドゥの視点から見た、神々の命と友情の間で揺れた心境を示唆している。あるいは、
ギルガメッシュ自身が、かつての友の死を受け入れ、不死の探求(栄光の守護)を決意した際の「自分自身への裏切り」を意味しているのかもしれない。
「落日と記憶の味」
「Now when I see the setting sun / I picture you there and never run」は、英雄的な決意の象徴である。落日は「終焉」と「栄光の黄昏」を意味し、それを見る度に「お前の姿を思い描き、決して逃げない」と誓う姿勢は、
聖杯戦争におけるサーヴァントの運命—消滅を覚悟で主(あるいは理想)を守る騎士道精神を体現している。
「There's got enough disgrace / I can still remember the taste」は、英霊としての過去の敗北や恥辱を「味」として記憶している表現。
ギルガメッシュがかつての
聖杯戦争(『
Fate/stay night』等)での敗北を経験しながらも、その「味」(苦渋さ)を糧に今度こそ「お前の栄光」を守ると決意する心境が読み取れる。
「栄光の防衛と真実の戦慄」
サビの「I'll die defending your glory / Your shiver is not a story」は、単なる忠誠の誓いを超えた、深い愛着の表れである。「お前の戦慄(shiver)は物語(虚構)ではない」—これは、偉大な王であっても、英雄であっても、人間である以上「恐れ」を抱えることを知っている者だけが言える言葉。王の
人間性を見抜きながら、それでも「お前の栄光のために死ぬ」と誓う。この主体と対象の関係性は、マスターとサーヴァント、あるいは
ギルガメッシュとエルキドゥの双方向的な絆を想起させる。
「They call me the lie and now I'm worn」—「彼らは私を偽りと呼び、今では私は消耗している」。英霊として召喚され、本来の全盛期ではない「偽りの身」で戦う苦悩と、長き時を生きた(あるいは死後の存在として在り続けた)疲れが滲み出ている。
まとめ
「AVALONIAN」は、『
Fate/strange Fake』における「偽りの
聖杯戦争」の核心—「本物と偽物の境界」—を音楽化した一曲である。Benjaminの詩的な歌詞は、
ギルガメッシュとエルキドゥの「天地創世の物語」における永遠の友情を、現代のスノウフィールドという舞台で再び問い直している。
澤野弘之の重低音とストリングスが織り成す
サウンドスケープは、英雄たちの「誇り」と「孤独」を表現しており、特に繰り返される「I'll die defending your glory」は、単なる戦闘のテーマを超えて、英霊としての存在意義—すなわち「誰かのために消え去ることの美しさ」を讃える讃美歌となっている。
本作の
サウンドトラックは2026年4月1日に発売され、全22曲が収録される。「AVALONIAN」はその中で特に感情的な深みを持つ一曲として、
Fateシリーズファンにとっても、
澤野弘之の音楽を愛する者にとっても、何度も繰り返し聴きたくなる珠玉の劇伴楽曲である。